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夏の思ひ出 [35mmF1.4G]

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 小学校2~3年の頃でしょうか。理科の教材で蚕(カイコ:カイコガの幼虫)を飼うことになりました。夏休みの間、一人2~3匹の蚕を家に持ち帰って飼育せよということだったと思います。それまではどちらかと言うと虫の類は苦手な方で、蟻が足を這い上がっても悲鳴を上げるような子供でした。しかし、真っ白で柔らかい蚕はなぜか愛しく感じられ、腕や鼻の頭に載せては壊れそうなくらい柔らかでスベスベな感触を楽しんでいました。ところがその純白の天使は見かけによらず大食漢で、しかも新鮮な桑の葉しか食べない偏食家でした。おかげで真夏の炎天下に桑の葉探しに奔走しなければなりませんでした。当時は東京と言えどもまだいくらかは野山が残っていましたが、桑の木限定となるとそう簡単に見つかるものではありません。散々探し回って見つけたのが、変電施設だったか浄水施設だったか定かではありませんが、小屋の周り10メートル四方くらいを金網で囲った敷地の中でした。それ以来、金網を乗り越えて桑の葉を失敬して来るのが日課になりました。まだ若くてあまり大きくない桑の木でしたが、真っ赤な桑の実がたくさん付いていました。一見美味しそうに見える若々しい赤い実を口に入れると、強烈な酸味で食べられたものではありません。しかし、すっかり熟して黒っぽくなった実を食べてみると酸っぱいながらも何とも言えない甘味があって美味しいことを知りました。

 先日、森林を散策していたら大きな桑の木をみつけました。まだ酸っぱそうな実が少しあるだけでしたが、脳裏にはあの熟した甘酸っぱい味の記憶と共に、真っ白く柔らかい蚕の感触が蘇って来ました。


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 もう一つの思い出はかき氷。子供の頃、家に小さな手回しのかき氷機がありました。白く塗られた鉄製のフレームに青いハンドルが付いた物でした。専用のアルミのカップで凍らせた氷を回転部のスパイクに取り付け、青いハンドルを回すとシャリシャリと涼し気な音を立てながら、下の器に真っ白な氷の山ができました。そこに明治屋のシロップをかけて一気に頬張ると、後頭部に激痛が走ったものです。今ではもっと美味しい物がたくさんありますが、当時はそんな何の変哲もないかき氷が、とても特別で贅沢な夏のおやつでした。


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