CDプレーヤのメンテナンス Again [audio]
30年以上愛用している1992年製造のCDプレーヤCDP-777ESJのディスクトレイが開かなくなってしまいました。11年前にもトレイが開かなくなって修理をしたのですが、また再発してしまいました。前回の故障原因はディスクトレイが振動しないようにトレイの左右を押さえているロックアームの動きが悪くなっていたことでした。今回も同じ原因かどうか確かめるために分解して中を見てみました。
ロックアーム(上の写真でトレイ上に左右に渡してあるステンレス棒)を手で動かしてみますが、特に引っ掛かりもなくスムーズに上下します。原因は違う所にありそうです。ディスクトレイを外してスライド機構を点検してみることにしました。
すると、トレイを搬送するギアにモータの動力を伝えているゴムベルト(上の写真の黄色矢印)がスリップしていることがわかりました。ついにゴムベルトが伸びてしまったようです。従って、これを新品に張り替えることにしました。実はいつかはこのような事態になるだろうと予想して、何年も前にゴムベルト(Φ35mm, t1.6mm)を買ってありました。
古いゴムベルトを外してみると楕円形に変形して伸びていました(上の写真の左側。右は新品)。このゴムベルトと3つのギアでモータの回転を減速させ、その回転をトレイの裏に形成したラックギア(下の写真を参照)で直線運動に変換してトレイを開閉させる仕組みになっています。今回はそのゴムベルトが伸びて動力が伝わらず、トレイが開かなくなっていました。ディスクトレイは樹脂に炭酸カルシウムを混ぜてガラス繊維で強化した材料で出来ているようです。持ってみるとずっしりと重く、叩いてもほとんど音がしません。振動の減衰が非常に大きいことがわかります。トレイの不要な共振を防ぐことが狙いでしょう。たかがディスクトレイにここまで気を遣うとは恐れ入ります。しかもそれだけでは事足らず、再生中にロックアームを押し付けてトレイの振動を抑制する機構まで付けているのですから、ディスクトレイの振動撲滅に対する執念さえ感じます。余程ここの振動が音質に影響を及ぼすと睨んでいたのでしょう。最近では高級機でもパソコンのディスクドライブを流用したようなディスク・トランスポートを使用しているケースもありますから、この妥協のなさには脱帽します。3つあるギアのうちファイナルギアと中間ギアはシャフトに挿してあるだけなので上に引き抜けば簡単に外すことができます。2つのギアを外すとゴムベルトを新品に交換できます。ゴムベルトを交換した後に、念のためスライドをガイドするシャフト(2つ上の写真の白矢印および下の写真の金属棒)を引き抜き、パーツクリーナで汚れを拭き取って軽く潤滑剤を塗布しておきました。
分解した時と逆の手順でトランスポート部を組み立て、電源を入れてトレイを開閉してみると、非常に滑らかに動くようになりました。あまりの気持ち良さに何回もイジェクトボタンを押して、しばらくの間ディスクトレイやロックアームの動作に見入ってしまいました。最後に対物レンズの表面を水で湿らせた綿棒で優しく拭いて、さらに乾いた綿棒で乾拭きして、前回の修理から11年分の汚れを落としておきました。
1980~1990年代に製造されたオーディオ製品には音質を最優先に考えて、贅沢な材料を投入し、丁寧に作られた高品質な物が多く見られます。そのため現在でも中古品市場では高値で取引されているようです。このCDプレーヤも、そこまでやるか?と思うくらい細部にわたって手の込んだ造りになっており、分解するたびに感心してしまいます。このCDプレーヤの何とも言えない深みのある音が好きなので、修理が可能な限りできるだけ長く使い続けたいと思っています。
ウチのCDプレーヤーも35年選手
でも最近は不調でディスクを認識しないことが多くなりました
中をあけてみようかな
by さる1号 (2023-12-24 08:07)
さる1号さん
CDP-555ESDもほとんど同じ機構のメカを使っていますのでベルトが伸びている可能性はありますね。
この時代のモデルはトレイの開閉に合わせてメカシャーシが上下する機構になっていますから、トレイがきちんと閉まらないとディスクがチャックされずにTOCを読み出せないことが起こるかも知れません。
by ZZA700 (2023-12-27 00:31)