A級アンプ完成 [audio]
去年から足掛け2年で製作していたA級オーディオアンプが完成しました。聴き比べによる部品選びの結果、プリアンプ用オペアンプはOPA2604(バーブラウン(現在はテキサス・インスツルメンツ))を、コンデンサはECQE2(Panasonic)、MKP2(WIMA)、MMSSAC(東信工業)の3種類のフィルムコンデンサを、抵抗器は表1に示すように僅差でRP-24C(ニッコーム)を使用することにしました。抵抗器は金属皮膜抵抗同士の比較だったので、音質の傾向が似ていて優劣をつけるのが容易ではありませんでした。味付けが少なくトータルバランスに優れたものという観点で選んでいます。PCを接続してネットワークオーディオも楽しめるようにUSBオーディオインターフェースとS/PDIF(光および同軸デジタル入出力)も付けました。USBオーディオを使用しないときにはデジタル回路の電源を独立に落とせるようにしてあります。フロントパネルはできるだけシンプルなデザインにしました。ただし、手に触れるつまみ類の感触にはこだわり、重量感のあるアルミ無垢材の削り出し品を奢っています。4入力セレクタにはLEDインジケータを付けました。
肝心の音質は、リファレンスとして用いたソニー製アンプ(TA-F333ES)と同等と思えるところまでチューニングできました。自作ならではの何かキラリと光る部分を持たせたかったのですが、まだその域には達していないのが少々悔しいです。しかし、豊かな低音と歪みの少ないクリアな高音は心地が良く、いつまでも聞いていたくなります。プラシーボ(偽薬)効果ゆえなのかも知れませんが、これも自作ならではの楽しみでしょう。当初の目標であった「低歪みで色付けの少ないクリアな音質」というコンセプトは一応達成できたと思います。
自分の耳だけでは信用できないので、念のため高調波歪率を測定してみました。表2にその結果を示します。PCで正弦波を発生させて被測定アンプで増幅(負荷8Ω、出力は常用する0.02Wに調整)し、その信号を抵抗分圧して再びPCに取り込み、FFT解析をしました。ノートPC内蔵の安物のサウンドボードを通して測定したために、絶対値はあまり良くない値になっていますが、相対比較にはなると思います。嬉しいことに、リファレンスとして用いたTA-F333ESよりも高調波歪率は小さくなりました。何ヶ月かの地道な作業が報われた瞬間でした。
アルミ削り出しのつまみ類とLEDインジケータ
パネルデザインは出来る限りシンプルに
USB端子の穴あけ加工。角穴はドリルで穴あけ後にやすりで仕上げる。
リアパネルの穴あけ完了。角穴は手間がかかるので嫌いだ。
端子類を取り付ける。金メッキが美しい。
基板類の組み付け。相変わらず配線が汚い。長さを考えないで撚り線を作るのが敗因だ。パワートランジスタはシャーシの底板とヒートシンクでサンドイッチして両面から熱を逃がしている。
表1 抵抗器 聴き比べ
メーカー | 型名 | 定格 | 種類 | 購入先 | 価格 | コメント | 点数 |
Tyco | LR0204 | 0.25 W | Metal Film (NiCr) | RS | \15 | 平均的 | 8 |
Vishy Dale | CMF-55 | 0.5 W | Metal Film (NiCr) | 共立 | \52 | シンバルがやや華やかな感じ 歪みが多いのかも | 8 |
ニッコーム | RP-24C | 0.5 W | Metal Film (NiCr) | 千石 | \32 | 平均的 | 9 |
タクマン | REY25FY | 0.25 W | Metal Film (NiCrAl) | 若松 | \32 | シンバルがややおとなしい感じ 歪みが少ないのかも | 8 |
表2 高調波歪率 測定結果
100Hz | 1kHz | 10kHz | |
TA-F333ES | 0.070% | 0.012% | 0.015% |
手作りアンプ | 0.060% | 0.007% | 0.009% |
お疲れさまでした。音音痴になっている若者に聞かせてやりたいですね。
by katakiyo (2012-02-06 20:39)
シンプルで美しいですねー
聴いてみたいなぁ
by maki (2012-02-06 20:57)
katakiyoさん
最近は質にこだわる人、こだわらない人の二極化が進んでいるような気がします。しかし、おっしゃるように質にこだわらない人の方が圧倒的に増えているのは確かですね。一番嘆かわしいのは、(特に国内の)メーカーが大衆の方しか向かず、質の良い製品が市場に少なくなってきていることだと思います。
by ZZA700 (2012-02-07 00:32)
makiさん
ありがとうございます。そう言っていただけると嬉しいです。
シンプルでもきれいに見えるように、つまみ、スイッチ、LEDの配置は図面上で試行錯誤しながら決めました。実は隠された寸法のマジックも(と言うほどたいそうなものではないですが)あるんですよ。^^
by ZZA700 (2012-02-07 00:43)
完成おめでとうございます。
聞き比べしてみたいものです。
表面にロゴを入れたくなりますね。
by さる1号 (2012-02-07 04:19)
さる1号さん
ありがとうございます。
今回はたくさんの部品を比較検討しましたので完成まで時間がかかりましたが、製作期間が長ければ長いほど完成したときの喜びは大きいですね。
ロゴですか。どんなのにしましょうね。中国でよく見かける「SQNY」とか??
by ZZA700 (2012-02-07 19:59)
シンプルできれいなデザインのアンプができたのですね。
きっと完成したアンプで聞く、お気に入りの音楽は格別なのでしょう。
うらやましい趣味です。
by Pin-BOKE (2012-02-09 01:35)
Pin-BOKEさん
エージングを兼ねてThelonius Monkのライブ録音を毎晩聴いております。
気のせいか、Monkのピアノやバックの演奏、特にシンバルが生々しく感じられ、一人悦に入っております ^^
by ZZA700 (2012-02-09 20:10)
いよいよ完成ですね。どんな音がするのかなあ。音の世界は奥深いですからね。
by COLE (2012-02-12 21:46)
COLEさん
私の耳には満足できるレベルになりましたよ。
欲を言えば、アースの経路を根本的に見直したいですね。
無音でボリュームを一杯に上げてスピーカーに耳を付けると
かすかにハムがブーンと聞こえてしまいます。
原因はわかっているのですが、改善しようとすると
ほとんど作り直しになってしまうのです ;_;
by ZZA700 (2012-02-13 00:37)
見事な高調波歪率の数字ですね(たぶんそうですよね)
音楽はずっと聴いていますが、
オーディオに関してはすべて出来合い、
もしその道にはまり込んでいたら、
音楽の姿の違った一面にも触れられたかな、
と、ふと思うこともあります。
by e-g-g (2012-02-21 18:34)
e-g-gさん
市販品はさすがに安定性や信頼性に優れていると思いますし、
真面目に作られた市販品には、手作りでは到底及ばない部分もあります。
しかし、手作りには作る楽しみと完成した時の達成感がありますよね。
好みのテイストに近づけられたり、手頃な価格で高音質が得られる利点もあるでしょう。
人間の感覚は想像以上に優れていて、測定器では判別が難しいほどの僅かな差も感じ取れてしまいます。
聞き手が再生する音質にこだわることによって、音楽の製作者側が真剣に作り上げた作品に込めたメッセージを、少しでも多く受け取ることができたら素晴らしいと個人的には思います。
by ZZA700 (2012-02-22 01:59)