CDプレーヤのメンテナンス [audio]
20年間愛用しているCDプレーヤ(ソニー製CDP-777ESJ)のディスクトレイが突然開かなくなりました。このモデルはゴム製のプーリーベルトが劣化するとトレイが開かなくなる症例が多いので、一応プーリーベルトのスペアは購入してあります。いよいよ交換の時期到来かと覚悟しながら分解を始めました。分解を始めてまず驚くのはねじの数です。底板はなんと16本ものねじで固定されていました。不要な振動の発生を抑えるためと思われます。その他にも随所に振動に対して配慮された形跡がうかがえます。例えば、トランスが発生する微振動を伝えないように電源トランスはゴムのダンパーを介してシャシーに固定されています。また、天板の裏にはフェルトが貼り付けられていました。もう一つの驚きは、天板を開けて中を見ると、きれいに銅めっきされた筐体の中には20年モノの電気製品とは思えないくらいホコリがほとんどたまっていないことでした。ディスクトレイのフェイスパネルを外すとその秘密が解けました。天板には通気口が一つもないのに加えて、ディスクトレイの開口部周りにはシリコーンラバーのシーリングが施されていて、外気が入る隙間は底板のパンチ穴しかないのです。おそらく、ディスクの風切音を外に漏らさない配慮なのでしょう。おかげで内部は非常にきれいでした。掃除後2~3日で薄っすらと積もってしまう部屋のホコリよりも少ないくらいでした。トランスと電源回路はデジタル系および制御系とアナログ部で完全に分離された2系統を有しています。DAC用電源の平滑コンデンサにはELNAのオーディオ用(12000μF)が奢られています。基板の配置はメタルで仕切られた2階建て構造でアナログ部とデジタル部を上下に分離しています。
色々と感心しながら分解を進め、肝心のトレイ開閉の不具合原因を探ります。CDトランスポート部を外して上下左右から動作を観察します。このCDプレーヤはトレイが閉まった後に一本の金属棒が水平に下りてきて、その両端に付いているゴムのダンパでトレイの左右を押し、再生中のトレイの振動を抑える構造になっているのですが、トレイが開く時にそれがうまく上がらないようです。金属棒を手で少し押し上げてやるとトレイが開きます。また、トレイ自体の動きが少し渋くなっているようでした。金属棒の動作軸とトレイのスライド軸に溜まった劣化したグリースを取り除き、潤滑油を差してあげるとトレイはスムーズに開閉するようになりました。懸念していたプーリーベルトはまだ使用できるようでしたので、スペアは温存しておくことにしました。
1990年代のオーディオ機器は色々なところに細やかな配慮がされていて、非常に手間隙かけて丁寧に作られています。現在のように安さばかりを追及した何のこだわりもない製品とは全く対極にあると言えるでしょう。私は安い製品を大量にばら撒く現在の多くの企業姿勢や、ハードウエアの価値に対して正当な対価を払わない消費者の意識に大変疑問を持っています。安っぽいモノには愛着が湧きませんし、壊れたり飽きたりすればすぐに捨てられるでしょう。作っては捨てられるモノを大量に生産し続けることは決して地球に優しくありません。また、知恵や創造性を搾り出して産み出された製品が悲しくなるような安価で売られたり、安易にコピーされて安売りされてはモノづくりをしているメーカの利益が圧迫されて日本の経済は悪循環に陥ります。真面目に作られた良いモノを正当に評価し、適正な価格で売買し、大切に末永く使う世の中になって欲しいと思わずにはいられません。
一日の疲れを吹き飛ばしてくれるような心地良い音を奏でてくれるCDP-777ESJ。このような製品が欲しくても、もう二度と手に入らないでしょう。これからも大切にしながら出来るだけ長く使いたいと思います。
底板の固定になんと16本ものねじが使われていた
銅めっきされたシャシーにはホコリがほとんどなかった。写真中央にある金属棒でディスクトレイの振動を抑える。この動きが渋くなっていた。
天板の裏にはフェルトが貼られている
トランスの裏。ラバーブッシュで振動が伝わるのを防いでいる。
ディスクトレイの入り口にはシリコーンラバーのパッキンがめぐらされている(上部で少し波打っている部材)
天板の中央部を受けるT字金具。共振周波数をシフトさせるためか?ねじ穴を一直線に揃えるためか?いずれにしてもコストを考えたら有り得ないこだわり部品だ。
昔の製品は拘りを感じさせてくれますね。
そしてその分耐久性もあって。
自分もSONYのCDP-555ESDを未だに使っています。
87年から無故障で頑張っています^^
今売っている製品にこんな耐久性はないでしょうね
by さる1号 (2012-10-18 05:54)
さる1号さん
今のCDプレーヤはプラスチックの筐体に基板が1枚入っているだけのスカスカですものねえ。こだわりの微塵も感じられません。555は無故障とは優秀ですね。お互いに良いものを大切に使って行きましょう^^
by ZZA700 (2012-10-18 08:06)
ぼくもCDのトレイが開かなくなって困ったことがあります。
以前使っていたレーザーディスクのプレーヤーの大きなトレイも開かなくなって、こちらは部品もなく泣く泣くパイオニアの最終機種を買う羽目になりましたが…
by gillman (2012-10-20 13:58)
gillmanさん
簡単な修理でまだまだ使えそうなのに、メーカーの部品保有期間切れを理由に修理も受け付けてもらえない状況は非常に悔しいですね。製品を大切に長く使ってあげたユーザーが報われる仕組みは作れないものなのでしょうか。
by ZZA700 (2012-10-20 17:20)
私のオーディオも買ってから30年近くも経ってしまった
アンプとスピーカー、LPプレーヤーが当時のままです
by COLE (2012-10-20 20:53)
COLEさん
20~30年前のオーディオは丁寧に作られたものが多いですから、大切に使いましょう。良い音がするのでしょうね。
by ZZA700 (2012-10-20 21:04)
おぉ、みなさんいい機種を使ってらっしゃいますねぇ。^^
当時のslowはCDP-333ESを買うのが精一杯でした。
が、いい製品は何年経っても色褪せないのですね。
未だに我が家でも現役です。
しかしその一方で当時のSony製普及価格帯のCDプレイヤーは
レーザー部の部品寿命が短く、故障頻度がひどかったこともあ
って「ソニータイマー」という悪評を受けたと記憶しておりま
す。
「安かろう 悪かろう」はブランドイメージを駆逐します。
DSLRも含めて安易な妥協をしないで製品の作り込みを期待した
いですよねぇ。d(^-^)!
by slowhanded (2012-10-20 21:11)
slowさん
333も真面目に作られた良い品物ですよね。パネルもアルミだし、トランスもDIGITAL用とAUDIO用の2つを積んでいたと思います。大切に末永く使いましょう。工業製品で安易な妥協をしたモノはダメですね。特にオーディオ、カメラ、自動車のような趣味の物は妥協したら存在意義がなくなります。もうすぐ発売になるα99には期待しているのですよ ^^;
by ZZA700 (2012-10-20 23:02)