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黒川温泉 [35mmF1.4G]

 熊本県阿蘇郡南小国町の山あいにある黒川温泉は、自然美と温泉情緒に溢れる素晴らしい温泉街でした。田の原川の渓谷沿いに二十数件の温泉旅館が点在していますが、どこも落ち着いた雰囲気の外観で、きれいに手入れが行き届いている印象を受けました。今では行きたい温泉ランキングなどの企画で必ず上位に入る黒川温泉ですが、その地位を築くまでのエピソードには興味深いものがあります。

 元々は湯治場であったこの温泉街は、立地の不便さから、かつて衰退の一途をたどっていました。ところが、1970年代後半に入って、旅館の2代目たちがUターンによりこの地に帰ってきたことから状況が一変します。彼らは温泉組合の青年部を組織し、温泉街の再興策を模索し始めます。彼らはまずデザインもまちまちで派手なだけの200余りの案内看板を全部撤去することを決めました。そして黒地に白文字に統一した木製の共同看板を立てることにしました。そして「街全体が一つの宿、通りは廊下、旅館は客室」という共栄共存のビジョンを打ち立てます。このビジョンに基づき、全旅館の露天風呂の中から3つを選んで自由に入浴できる「入湯手形」を発行して温泉街全体の活性化を図ると、それが好評を博しました。旅館組合のこのビジョンはさらに南小国町の「街づくり協定」に発展し、住民ぐるみでふるさとの景観を守って行こうという機運につながりました。こうして山奥ならではの良き温泉街の雰囲気が守られるようになったのです。黒川温泉の名声は国内のみならず海外にも知られることとなり、2009年にはフランスのMichelin Green Guide Japonで2つ星を獲得しています。

 このムーブメントの中心になったのが旅館「新明館」の後藤哲也氏(当時24歳)でした。彼はひたすら魅力的な温泉づくりを目指しました。ノミ一つで3年半の歳月をかけて30メートルの洞窟風呂を作ったり、自ら露天風呂に雑木を植えて剪定をし、絵になる温泉づくりを実践しました。こうして新明館は繁盛しましたが、後藤氏はそれだけに留まらず、共栄共存の信念から、惜しむことなくこの手法を他の旅館にも伝授しました。そして地域が一体となって絵になる温泉づくりが広まって行ったのです。最初は変人扱いされていた後藤氏ですが、今では「ノミとハサミで黒川温泉を変えた男」「黒川温泉の父」などと呼ばれ尊敬を集めているそうです。

下の写真はすべて後藤哲也氏が手がけた旅館の一つ「山みず木」にて撮影したものです。庭の手入れは完璧で、渓流沿いの露天風呂はマイ・ベスト3に入る素晴らしい温泉でした。

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コメント 7

ナビパ

繁栄するにはやはり模範になる人の存在が欠かせないのですね。
こうして心もくつろげる湯治場素晴らしいと思います。
あ〜温泉でゆっくりとくつろぎたくなってきましたよ。(笑)
by ナビパ (2015-09-26 15:55) 

ZZA700

ナビパさん
街づくりが素晴らしい温泉街でしたよ。
何事にも信念と実行力が大切ですね^^
ここの温泉はお薦めです。
by ZZA700 (2015-09-26 22:57) 

さる1号

黒川温泉、いいですよね
一度しか行った事ないですが、凄くお気に入りの温泉です
ただ欠点は・・・・リピしたくても遠すぎて^^;
by さる1号 (2015-09-27 09:08) 

ZZA700

さる1号さん
さすがはさる1号さん、黒川温泉も行かれているのですね。
九州は遠い上に、熊本、大分からも離れているのでアクセスは大変ですね。
でも、その不便さが良い雰囲気を保つために役立っているのかも知れません。
by ZZA700 (2015-09-27 09:59) 

たくや

のんびりしたいな~(笑)
by たくや (2015-09-27 16:43) 

ZZA700

たくやさん
ここはのんびりするのに良いところですよ~♪
by ZZA700 (2015-09-27 23:41) 

メタボ歴4年

両親の在所から1時間圏内です!
一度しか泊まったことはないですが しっとりした雰囲気が堪らなく好きでした。
阿蘇周辺のミルクロードや大観望、だったかな?
ツーリングロードも最高ですよね‼
by メタボ歴4年 (2015-10-14 10:14) 

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